鼻呼吸の大切さをメインに随筆が『武道』(平成29年3月号)に掲載されました。
2017.02.06更新
誤嚥について
よくお正月になると、お餅をノドにつまらせて窒息死する事故のニュースが報道されます。
子供がミニトマトやブドウ、飴玉やマメ類をノドにつまらせて死亡する事故は日本では年間20人にもなるようです。
アメリカでは、年間70人との報告も有ります。
どうしてこのようなことが起こるのかと言えば、食物が口から入り、食道に行く通路と空気が鼻から入り(鼻が詰まっている場合は口から)
肺に入る通路が咽頭で交差しているからです。
その咽頭部の管に食物がつまって動かなくなってしまうと、肺への空気の通り道が塞がれて窒息してしまうことになります。
その窒息が5分も続けば命が危ぶまれることになります。
このような構造が原因で起こる問題で誤嚥もあります。
これは、本来は口から入った食物は、咽頭を経て食道に入るべきなのですが、間違って肺に入ってしまうことから起きる現象です。
前述したように、口からの食物も、鼻からの空気も同じ咽頭を通り振り分けられています。
呼吸は四六時中しなければないのですが、食事は限られた時間なので常に肺の入り口は開いています。
ということは、食物が空気が入るべき肺に入ってしまうリスクが常に存在しているということです。
では何故そんな危険な構造なのに誤嚥事故が通常は発生しないかというと、
食物が咽頭部に入ると肺の入り口にある喉頭蓋という蓋が閉じて食物が肺に入らないようにする反射機能が人には備わっているからです。
その機能が老化したり、各種神経筋機構のマヒにより鈍ってしまうと、食物が咽頭に落ちてきても喉頭蓋が閉じず肺に入ってしまうのです。
これでよく起こることが誤嚥性肺炎です。
肺炎は日本人の死亡原因の第3位であるようですが、その肺炎の多くは誤嚥が原因と言われています。
誤嚥しないような取り組みも大変重要なことですが、たとえ誤嚥したとしても口腔ケアが十分であれば、
肺炎の発症を抑えられるとのデーターも有ります。口腔衛生に留意しましょう。
食事と呼吸という生きて行く上で非常に重要な機能が、かなり危うい反射機構により維持されていることが不思議ですよね。
そう思われるのも当然のことです.動物一般、ネコもイヌもすべてこんな危なっかしい構造にはなっていません。
み呼吸のための気道と食物の移動経路は交差しないようになっています。
進化の頂点に君臨する人間がなぜこのような構造になった理由は、肺から出た空気を口から出して種々の音を発声できるようにするためでした。
コミュニケーションのツールとなる多種の言葉を使えるようにするために、生きるために根源的な呼吸機能と摂食機能をリスクに晒せることを進化の過程で選択したのだと思います 。
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2017.02.06更新
顎関節症について
顎関節症とは
食事をしたり、お話ししたりする度に動かすお口は、下顎が開閉するようになっているのですが、
それは外耳道の1cmまえにある顎関節が蝶番の支点となっています。
その顎関節に炎症が生じたり、顎を動かす筋肉に問題が起きて顎が動かしにくくなったり痛みを感じるようになるのが顎関節症です。
簡単な診断法は、外耳道の手前をご自分の手で触って、顎を動かす時に動きを感じる部分を少し強く押した時に痛みを感じるか、
下顎のえらの部分に付着する顎の開閉に重要な筋肉である咬筋に違和感が有るかを確認することです。
顎関節症は、顎関節組織の負担能力以上の力による炎症ですので、治療法としては、激しい運動などに因る膝や肘の関節炎同様、安静にして治るのを待つというのが大原則です。
しかしながら、顎を動かさないで日常生活をするのは不可能です。
また、主な原因は、夜間に行なっている歯ぎしりや、日中上下の歯を接触させる『歯牙接触癖』など、他の関節炎と異なり、
自覚することなく自分で自分の顎関節にダメージを与える力なのです。
無意識に行なっている悪い習慣を止めることは難しいことですが、日中意識的に上下の歯を接触させないようにし、
自己暗示をかけて夜間の歯ぎしり等を減少させるよう努めることで、大方の人の症状は軽減します。
そのように心がけても症状が改善されない場合は、マウスピースを歯科医院で製作していただき、睡眠時に装着して頂くことになります。
ストレスがあると夜間の歯ぎしりが激しくなるので、心の安静にもご注意ください。
噛み合わせが原因という説を主張する歯科医もいて、歯を削ったり、歯に冠を被せたりする治療を提示されるかもしれませんが、
日本顎関節学会では否定していますので、十分診査・検討されてから処置されてください。
顎がかくかくと音がするのは顎関節症が落ち着くと軽減するものですが、それ自体には問題がないので多少残っていても心配することはありません。
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2017.02.06更新
睡眠時無呼吸について
・米スリーマイル島原発事故(1979年)
・米スペースシャトル「チャレンジャー」爆発事故(1986年)
・ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)
・JR山陽新幹線「ひかり126号」で居眠り運転(2003年2月26日) これらの事故の原因はそれぞれの担当操作員の睡眠の問題がからんでいたのです。 皆様は昼間に眠気や居眠りで困ることはないでしょうか?
いくら寝ても朝疲れが取れてない感じがしたら、睡眠時無呼吸の疑いがあります。
肥満傾向のある方は、気道が狭くなりがちですので、そのリスクは高くなります。
また、痩せていても、顎が細く歯列が狭い方は要注意です。
欧米人に比較して日本人(東洋人)は肥満度が少ないにも関わらず、睡眠時無呼吸になっている比率が大きいことが問題になっています。
いびきをかく人や、口呼吸の方にも多いので、お心当たりになる方には検査することをお勧めしたいです。
睡眠時無呼吸の方は、高血圧、心不全、不整脈、大動脈疾患や心筋梗塞・脳梗塞を起こしやすいと言われています。
成長期のお子様でも、扁桃腺が大きい方やアデノイド・鼻閉の場合は睡眠時に無呼吸に陥る可能性が高く、十分深い睡眠を得られてないことが多いと言われています。
そうなると、成長ホルモンの分泌が少なくなり、成長阻害が起き身長体重の成長が鈍くなります。普段の生活でも落ち着きがなくなったり、学力の低下に関係するようになります。
そうしないためには、鼻閉を改善させ、アデノイドや扁桃の腫れを抑え、歯列を拡大することにより鼻呼吸がスムーズに行なえるようにすることが肝要です。
当院では患者様のご自宅で検査を受けられる睡眠時無呼吸の検査器具の貸し出しを行なっています。
あわせて、治療器具についての相談もさせていただいております。是非、ご検討ください。
なお、成長期のお子様に付いては、気道の計測を行ない、歯列矯正の必要性についても説明させていただいております。
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